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学術論文を読む#01〜美術館展示室の建築計画的研究〜

学術論文を読む#01〜美術館展示室の建築計画的研究〜

 

学士の卒業論文を今年は書かねばならないということで、教授にこのGWに最低5本、興味ある分野の論文を漁って読み、ゴールデンウィーク明けにレビューをするように言われた。

 

あまりいかない大学の図書館に足を運び、論文を漁ってプリントアウトして少しずつ読み進める思いっきり外で駆け回りたいようなよく晴れた休日・・・。

正直に言って、これまで論文なんて読んだことがなかった。

 

建築学会計画系論文集から幾つかの論文をプリントアウトしてきたのだが、もっとも興味関心分野に近かったのはこれ(CiNiiで「美術館」と検索したらヒットした)。

 

「美術館展示室の建築計画的研究」

まだ20世紀だった頃に、東京工業大学の仙田満さん、篠直人さん、矢田努さん、鈴木裕美さんの4人によって執筆されている。

 

今日はこの論文を簡単にレビューしてみたい。

 

研究の目的

 

美術館の利用者満足度や順路のわかりやすさには、展示室の形態や規模、そして展示壁面の配置方法が大きく関わってくると筆者は考えているようだが、当時美術館にまつわる研究においては展示替えや利用者動線についてのものなどしかなく、展示室の規模や展示壁面についての十分な考察はなされていなかったという。

 

そのため、この研究では「展示室面積」や「展示コーナー数」には最適な範囲があると予想し、その検証を試みるものとなっている。

 

 

研究方法

関東近郊の122の美術館職員を対象に、郵送にて施設の概況把握のためのアンケートを行ったのち、回答を得られた10館について、SD法に基づく美術館展示室の評価の因子分析を行ったという。

 

SD法とは

 

SD法とは、ある対象に対する感情的なイメージを両極端の意味を表す形容詞軸にとって5段階もしくは7段階で評価する方法のことを指すそうだ。

 

 

kotobank.jp

 

感性はそのままだと解釈しにくいが、数値化することで解釈しやすくなる。

SD法を用いて得たデータは何かしらの手法で分析をすることにあるが、中でも一般的なのは「因子分析」だという。

 

この論文に掲載されている研究でもSD法→因子分析、という流れで分析が行われていた。

 

「感性」を数値化し、「因子分析」によって特定の感情を引き起こす要因を特定する。

 

因子分析については以下のリンクがわかりやすかった。

8.1 因子分析の考え方

 

それからこれが面白かった。

www.jissen.ac.jp

 

研究の結論

SD法に話がそれたが、SD法→因子分析の結果、利用者による美術館評価は「期待感」「ゆとり」「作品の評価」など8つの因子により記述されることが判明したそうだ。

 

この中の第一因子は「順路のわかりやすさ」、第二因子は「展示室の満足度」だったが、これらと「展示室コーナー」の相関関係は、前者については規模が大きければ大きいほど良いという結果が得られたのに対し、後者に対しては中規模で最大値をとる。

 

第一因子と第二因子に対する説明変数(展示室コーナーの規模・数)は明確な相関関係はないということだ。

 

これらを踏まえ、順路をわかりやすくするための提案として

①展示面積は400平米以上

②廊下接続型の採用

・・・(など多数)

展示室の満足度を高めるための計画上の提案として

①非直行の平面グリッドを採用

②中央ホール型の採用

・・・(など多数)

という示唆を提示していた。

 

 

雑記

「建築計画の計画ってどうやって進めるんだろう?どうやって評価するんだろう?研究の結果、何がどうなるんだろう?」というレベルにいるのが今の自分。

 

この論文からは、美術館の計画における分析評価手法(SD法と因子分析)、実際の美術館設計に活かせる示唆だしなどを含め学びを得ることができた。

 

僕は美術館巡りが結構好きなのだが、例えばロンドンのナショナルギャラリーは「中央ホール型」に分類されるコーナー構成でこの研究中に示されていたように非常に順路がわかりにくく、まわりにくいと感じていた(作品群はすごいが!)。

 

また、美術館・博物館の巡りやすさを結構気にしていたので腑に落ちる研究だった。

 

僕的に「順路のわかりやすさ」で高評価の美術館・博物館はシュツットガルトのポルシェ博物館、ミュンヘンのピナコテーク(アルテもノイエも)あたりだったが、これらは廊下接続型というよりも一方向的に進路が設計されていた美術館・博物館だったなあ。

 

それから、「展示室の満足度」というところで「非直行の平面グリッドの採用」「コーナー角度」などが焦点として挙がっていたのだが、これは読んでみて納得。

実際に非直行性により別世界観を感じられる展示室は思い返してみてとてもよい印象だ。

例えばワシントンDCのフィリップスギャラリーであったり、ニューヨークのノイエギャラリーであったり。

 

 

SD法にまつわる論文も見つけたので備忘録として貼っておく。

セマンティック・ディファレンシャル法(SD法)の可能性と 今後の課題